悪霊に憑りつかれて夜中にコンビニに駆け出したときの話

悪霊の存在を

 

信じている人も

信じていない人も

 

こんにちは。

 

白湯を大量に摂取し続けている管理人です。

 

 

これはとある春先、悪霊に憑りつかれたときの話だ。

 

いつもの日課、もとい惰性で

俺はYouT●beを見ていた。

 

「っ……!?」

 

 本当に、突然の出来事だった。

 

俺の脳内に

 

≪サンドイッチが食べたい……≫

≪サンドイッチが食べたい……っ≫

≪サンドイッチが食べたいのぉ……っ!!≫

 

という声が反響し始めた。

 

「だ、誰だ!!! 誰なんだお前は!!!」

 

そう叫んでも、周りには誰もいない。

 

≪サンドイッチが食べたい……≫

 

その声が反響するばかりであった。

徐々に強くなるそれに、俺は苛立たし気に叫んだ。

 

「サンドイッチだとっ!

小麦に砂糖を含んだトーストを摂取しようだなんて、冗談じゃねえ!!!

腸が荒れて脳にも損傷を与えるって聞く材料じゃねえか!」

 

だが、声は強まるばかりだ。

 

≪サンドイッチが食べたい……≫

≪コンビニのカフェサンドぉ……≫ 

 

「はぁ!? コンビニのカフェサンドだ、と……」

 

次の瞬間、俺は恐怖に慄いた。

 

「っな、なんだ、体が勝手に……っ!?」

 

俺の身体は、俺の意思とは反対に

コートを身につけ、マフラーを巻き始めていた。

 

「おいおいおいおい、なんだってんだよ!

まさか俺にサンドイッチを買いに行けってか!!?

冗談じゃねえぞ!!!」

 

だが、体は言うことを聞かない。

これはただごとではない。

 

俺は悪霊に憑りつかれちまったんだ!!!

 

俺はカバンを肩から掛け、外に飛び出していた。

 

「さ、寒いっ!!!」

 

俺の体はコンビニへとまっすぐに駆け出していた。

 

商品陳列の棚を見て、俺に憑りついた悪霊が肩を落としたのを感じた。

俺はほくそ笑んだ。

 

「ハハハッ、残念だったな。セ●ンイレブンにはカフェサンドは置いていないんだよ!

お前の言うカフェサンドってのはファ●マだろう!!!

この近くにはセブンイレ●ンしかねえんだよ、ハハハ、は……」

 

次の瞬間、俺の体はふたたび動き始めた。

 

「なっ……こいつ!! 今度は総菜パンコーナーに行こうってか!?

意地汚いやつめ!!!」

 

だが、そこでも俺に憑りついた悪霊が肩を落としたのを感じ、安堵した。

 

「ふふ、お眼鏡にかなったパンはなかったようだな。

これで諦めて……。……っ!?」

 

総菜コーナーに直進し始めた体に、俺はハッとした。

 

「お、お前、まさか……っ」

 

俺の手は、サラダチキンをわしづかんでいた。

その次には、吟味するように明太子ポテトサラダを。

 

そして、食パンコーナーを物色する俺。

 

「て、てめえ、まさか……出来合いのものがないなら

自分で錬成してやろうって……そういうことかっ!?」

 

最悪だ!!!

食パンだけならず、マヨマヨの入った明太子ポテトサラダだと!!

マヨの油も脳に悪いっていうじゃねえか!!!

 

このままじゃ俺の体が!!!

 

抵抗しようとする俺を嘲笑うかのように、手は食パンをつかんでいた。

ちくしょう!!! 超熟じゃなくて、金の食パンを取りやがった!!!

ちょっといい方を取りやがって!!!

 

だが、このまま悪霊の思い通りにさせるわけにはいかない。

 

「うぉおおおおっ!!!」

 

俺は必至で体を動かし、コールスローの入った袋を手に取った。

 

「お、お前の思い通りにさせてたまるかよ……っ。

野菜を摂取して、少しでも健康体を維持してやるッ……!!!」

 

だが、そこで力尽き俺はレジに向かっていた。

 

財布に残っていたラスト野口英世は消え去った。

 

家に戻ると、俺は乱雑にコートとマフラーを脱ぎ捨て

さっそくサンドイッチ作りに取りかかった。

 

このときすでに俺は力尽きており、体は悪霊の思うがままだった。

 

厚切りパンをスライスすると

細かく切ったサラダチキンと

コールスローと明太子ポテトサラダをパンに載せた。

 

俺は理性のないケダモノのようにそれをむさぼり食った。

 

……うまかった。

 

夕食を食べたにも関わらず

悪霊が憑りついてきたばかりに

サンドイッチを夜中にむさぼり食う俺。

 

情けなさに泣きそうになった。

 

腹が満たされると、いつのまにか悪霊の気配は消え去っていた。

 

 

……おそろしい話だぜ。